9/7 「教育現場におけるスマートフォン/タブレット導入の展望と課題」開催報告

2011年9月12日 Posted in 通信プラットフォームWG

im_20110907.jpg教育分野におけるICT利活用への関心が高まっています。とくに教育手法に関して比較的自由度が高い高等学校以上の教育機関においては、すでに一部の学校・大学等でスマートフォンやスマートタブレットを導入し、実践を始めているところが増えています。こうした取り組みについては通信・ICT業界の関係者にとっても新たなビジネス市場として期待が持てる分野といえます。今回の研究会では、こうした教育機関における導入経緯や導入に当たって浮かび上がってきた課題について整理を行い、教育関係者と通信・ICT業界の関係者との間で情報共有を図ることを目的として開催しました。

最初の事例は、生徒に対して500台のauスマートフォンを提供し、独自の教材を活用し通信教育の実践を行う通信制のルネサンス高等学校です。続いて、大学における事例として、今年度から新入生全員にiPadを無償貸与した武蔵野学院大学の事例を報告しました。  そして、「デジタル教科書教材協議会」の発起人/副会長を務められている、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 中村伊知哉氏の基調講演で、今後の教育ICT推進の目指すべき方向性についてご教示いただきました。

BBA新世代ブロードバンド研究会 通信プラットフォームWG第10回
「教育現場におけるスマートフォン/タブレット導入の展望と課題 開催報告書

■講演者

im_momoi_110907.jpgルネサンス・アカデミー株式会社
代表取締役社長
桃井隆良氏
「ルネサンス高校におけるスマートフォン活用について」

 ルネサンス高校は、教育特区の制度を活用し、株式会社立広域通信制単位制高校として認可を受け、2006年4月に茨城県大子町に開校しました。全国から生徒を募集でき、インターネットを活用した教育と個別指導を行っています。ルネサンス高校ではこれまでデジタルペンを活用したり、携帯電話を用いたモバイルラーニングに取り組むなど、様々な工夫をしてきました。そして今年度からは500台のスマートフォンを導入し、課題学習に活用を始めました。携帯電話では択一式にせざるを得なかったデジタルレポートも、画面サイズやタッチパネルの操作性、さらに音声や動画等のデータ活用ができることからより「学習」的な要素を取り入れやすくなり、教育効果が確実に向上しているということです。

im_kogure_110907.jpg武蔵野学院大学
国際コミュニケーション学部准教授
木暮祐一氏
「武蔵野学院大学におけるiPad導入経緯と課題」

 学生が大学を卒業し、即戦力で活躍するには、とくにメール利用やインターネットの活用といった情報利活用能力を高める必要があると感じています。そのためには1人1台のノートPC活用が必要と感じていましたが、電池の持ちの問題や導入コストの問題など、非現実的でした。
 しかし、朝から夕方まで電池が持ち、また手軽に持ち歩けるサイズのiPadであれば、ノートPCに準じたメールやインターネット活用が可能で、教育にも有効に活用できると考え、本年度新入生より全員に無償貸与していく方針を打ち出しました。  しかし、iPad導入まで道のりは容易ではなく、納入を予定していたiPad2は発売が遅延したため、実際に運用が始まったのは本年6月から。実際には夏休み前までの2カ月程度の実績しかありませんが、その間に学内の無線LAN環境の整備をはじめ、インフラや教育設備、イントラネットの整備に奮闘しました。導入後、各教員の創意工夫で様々な形で授業での活用が始まりました。その成果などは今後取りまとめていきたいと思います。

im_nakamura_110907.jpg慶應義塾大学大学院
メディアデザイン研究科教授
中村伊知哉氏
「デジタル教科書、教育ICTの今後の展望」

 「すべての小中学生がデジタル教科書・教材を持つ環境」を実現すること目指して、現在127社の会員企業の協力を得てデジタル教科書教材協議会を設立し、課題整理、政策提言、ハード・ソフト開発、実証実験及び普及啓発を進めています。よく、紙の教科書を無くすのか、と問われますがそこが目的ではありません。教育の情報化は学習のモチベーションのアップにつながりますし、それによって生徒がやる気を高めてくれることで、より高い教育効果が得られることを期待しているわけです。   世界のブログ利用率を調査したデータがありましたが、なんと日本語で書かれているブログは37%で世界一、英語(33%)を超えています。つまりそれほど日本の若者はインターネットを活用しているのです。こうした背景があるのだからこそ、教育の情報化を進め、生徒の勉強へのやる気を高めることができるはずです。

■まとめ

 今回の研究会には、情報通信側関係者のほか、教育者や、教育関連企業などからおよそ60名の方々が参加され、議論に加わっていただきました。  スマートフォンを通信教育の実践に活用しているルネサンス高校では、Eラーニングの教材も独自に開発し、学習者の効果を見ながら内容の向上に努めているそうです。桃井隆良社長は、「インターネット上にはiUNIVなど、世界主要大学の講義がコンテンツとして閲覧できるようになっている、こうしたものも我が校の講義の中に取り入れて行きたい」とし、またわが国でも中学や高校で、講義をオープンソース的なコンテンツとして配信させるような取り組みがあっても良いのではないかという提案をされていました。
 また、桃井隆良社長、中村伊知哉教授ともに、現状の教育における生徒の「やる気の低下」を懸念され、学習意欲をいかに高めていくかを考える必要があることを指摘されていました。たとえば、OECDの学習到達度調査等では、わが国は低下しつつも成績は上位に入っています。しかしながら、学習意欲はワーストに近く、わが国の生徒がいかに学習に興味を持っていないかということが明らかになっています。隣国の韓国では成績も学習意欲もトップで、かつてのわが国のようです。生徒・学生の時だけでなく、将来に向かって勉強していくという習慣を国民が身につけていかないと、国家は成長して行きません。だからこそ、子どもの頃から勉強が嫌いにならないように、学習コンテンツやその中身がやりがいのあるものでなければならないと説明頂きました。こうしたところで、学習モチベーションを高めるデジタル教科書や教材、Eラーニングシステムが果たす役割は大きいものといえるでしょう。
 一方、武蔵野学院大学ではiPadを導入するに当たって、インフラや教育設備の大幅な更新を行いました。無線LAN環境の整備やブロードバンドの導入、iPadを活用したコミュニケーションを実現させるためのイントラネット構築など、タブレット端末やスマートフォンを教育現場に導入するに当たって端末に付随して様々な情報通信設備を一体的に設計し、環境構築していく必要があることを示唆しました。今後、多くの教育機関で情報通信端末の導入が行われますが、その際に情報通信関連企業がどんな提案をしていくべきかなどの参考になったのではないでしょうか。

■ BBA新世代ブロードバンド研究会 通信プラットフォームWG第10回
「教育現場におけるスマートフォン/タブレット導入の展望と課題の
開催概要は、本講演会の開催告知ページをご覧ください。