【開催報告】「M2Mとビッグデータの活用で進めるビジネスの革新」

2012年8月10日 Posted in 通信プラットフォームWG

新世代BB研究会 通信プラットフォームWG 第13回講演会
「M2Mとビッグデータの活用で進めるビジネスの革新」開催報告

IMG_4821.jpgIMG_4815.jpg2012年7月17日、新世代ブロードバンド研究会・第13回行事として「M2Mとビッグデータの活用で進めるビジネスの革新」をテーマに講演会を開催いたしました。

わが国におけるスマートフォンの普及は目覚しいものがあります。スマートフォンはいわば"通信機能がついた、持ち歩けるコンピュータ"であり、従来のフィーチャーフォン以上に様々な情報連携が期待できます。スマートフォンは、それ自体がPCや家電との連携などを図っていくことも期待されていますし、身の回りの各種センサー等との通信による、いわゆる"M2M"による情報収集でも重要な役割を果たしていくことが期待されています。
こうして収集された各種情報(ビッグデータ)を有益に活用していくことで、ビジネスのさらなる拡がりも期待できますし、スマートフォンを活用するユーザーにとってもより豊かな社会生活を享受できる様々なサービスが考えられるでしょう。そこで、このようなM2Mとビッグデータの活用とその展望について、総務省大臣官房審議官の稲田修一様より基調講演をいただきました。さらに具体的な活用事例として、ヘルスケア分野で活用できるプラットフォームを実現されたシャープ株式会社健康システム研究所主任研究員の和辻徹様に取り組みについてご紹介いただきました。また、教育分野においても、情報の蓄積を活かした新しい動きが出てきており、これをキャスタリア株式会社代表取締役社長の山脇智志氏にお話いただきました。

■基調講演
「M2Mとビッグデータが変えるあなたのビジネス」
総務省大臣官房審議官 情報流通行政局担当 稲田 修一 氏

IMG_4823.jpgIMG_4817.jpg M2Mとはコンピュータネットワークに繋がれた機械同士が人間を介在せずに相互に情報交換し、自動的に最適な制御が行われるシステムのことです。情報通信ネットワークと通信技術・通信機器の発達、およびセンサネットワーク技術や情報処理システムの高度化により初めて可能となりました。一方、ビッグデータは情報通信、とくにインターネットの発達にともなって蓄積されるようになった莫大な量のデータのことです。その巨大データの集まりを分析することでビジネス傾向の特定、病気の予防、犯罪の対策などにメリットがあると言われています。
 たとえばアメリカでは収集したデータを分析し活用して成功している事例が多数あります。アメリカのあるインターネットラジオ局ではWebからラジオ視聴履歴を元にリスナーに最適な広告やクーポンを出せるようにしていますすが、クリックレートも高く、広告とのマッチングは非常に良いそうです。
 さらにM2Mを活用して、情報を自動的に収集していく仕組みが今後はトレンドになっていきます。たとえば牛の体温を自動収集することで、牛の発情時期がわかるので出産日の予想もつきやすくなります。これによって死産を減らすことが可能になっています。また、レシピサイトのクックパッドは、食品業界との協業による情報連携で収益を上げています。
 構造物では、たとえば東京ゲートブリッジに多数のセンサーが取り付けられ、通行量などを把握し構造物劣化をシミュレーションしています。これにより将来的な保守コストを低減できるようになります。こうした動きは、センサー価格が安価になってきたこと、さらに通信料金やデータを扱うサーバ類の運用費などが安価になってきたことで適用領域が広がってきたといえましょう。
 ICT投資という視点で国際比較すると、韓国、米国は21世紀以降も投資額が増えているにも関わらず、日本は減っています。その要因はずばり「情報の集積と利活用の遅れ」の影響が大きいと思われます。世界と比べると、わが国では新たに蓄積されるデータ量が少ないことが分かっています。さらに、蓄積された膨大な情報をいかに分析し、有用な情報を得るかということも大切なのですが、深い分析をするための訓練を受けた新たな大学卒業生数がわが国では少ないといえます。わが国の弱点は、こうしたところに課題を抱えており、またこの部分をどうするかというところに新たなビジネスチャンスも考えられます。


■講演
「デジタルヘルスケアの現状-スマートフォンと健康機器連携で実現を目指す生活習慣病対策 -」
シャープ株式会社 研究開発本部 健康システム研究所 第1研究室主任研究員 和辻 徹 氏

IMG_4829.jpgIMG_4827.jpg わが国では、かつての主な医療的課題は「感染症」でした。戦後これが撲滅できた一方で、増えてきたのが「生活習慣病」です。生活習慣病は原因がなかなかはっきりしません。というよりも長年の生活習慣が体を蝕んでいくのです。この生活習慣の見直しというのは、病院では治療できません。自分自身で心がけて直していくしかありません。ICTを活用した慢性疾患管理の効果に対するエビデンスは得られつつあります。上手にICTを活用して、生活習慣の改善を図っていくのが良いのです。そのためには、健康機器を通信で結ぶためのプラットフォームを作っていく必要が生じてきました。そこで取り組んだのが「Continuaアライアンス」です。
 実際に、これまで世界中の企業があつまって、こうした共通のヘルスケアプラットフォーム構築を目指した取り組みを行ってきました。しかしながら、それらは残念ながら普及してきませんでした。要因は土台となる媒体(中心となる機器)がなかったからです。ところが、昨今の携帯電話からスマートフォンへのシフトによって、スマートフォンがその「媒体」としての役割を果たしてくれるようになったのです。スマートフォンであればすべてがオープンな環境で、ヘルスケア領域においてもM2Mからクラウドへのビッグデータまで実現しようとしている。
 Continuaアライアンスは国際規格ですが、標準化については日本でまとめられたものが採択された、日本から生まれた規格といえます。スマートフォン用のAndroid 4.0では標準でサポートするようになったことで、今後対応した周辺ヘルスケア機器も増えていくと思われます。


■講演
「スマートフォンが教育と学習をどう変えるのか? ~21世紀の進路指導は「ビッグデータ先生」が担当?~」
キャスタリア株式会社 代表取締役社長 山脇 智志 氏

IMG_4836.jpgIMG_4831.jpg キャスタリアでは、ソーシャルラーニング事業を行っています。ソーシャルラーニングというのは、「人とのつながり(社会性)」を利用してより高い学習効果を得ようとする取り組みや、それを支える技術のことを指します。新たなつながりを作るという側面もあると思いますが、いまあるつながりを更に意味あるものに「昇華」させ、または「再構築」することが醍醐味だと考えています。さらにソーシャルラーニングでは、FacebookやLinkedinといった既存のコミュニケーションレイヤーを使って、もう一段階上のレイヤーに上げていくというプロセスを経た後、その上位レイヤーの中で、また新たなつながりが生まれます。
 教育にはフォーマルラーニングとインフォーマルラーニングという2つの側面があると思います。フォーマルラーニングといのは、いわば学校教育です。一方、日常生活の中で体験することやそこで学習していくことをインフォーマルラーニングとしています。キャスタリアではこのそれぞれの教育環境において活用できるツールを作ってきました。1つは、iUniv(iUniv.tv)という動画や音声コンテンツを利用したソーシャルラーニングメディアです。iUnivはどちらかと言うと、フォーマルラーニングの一環として開発されました。もう一つは、wikipediaを使って言葉を知識に変えていくソーシャルラーニングアプリ「goocus(gooc.us)」を提供しています。これはインフォーマルな意味合いを強く持っています。例えば、歩いているときや呑みに行っている時、友達と会っているとき、カフェで本を読んでいる時に行われるスタイルや方向性が勉強とは思えないような学びのことです。GoocusにはGPSを使って調べたロケーション情報を学ぶという機能があるのですが、そういった形にとらわれない学びというものをユーザーは体験できます。
 そしてソーシャルラーニングの先には「代理学習」なんていう考え方が出てくるかもしれません。『インフォーマルラーニング』の著者であるジェイ・クロスは、「学ぶ」とは、自分のネットワークの質を最適化することであるとしています。すなわち、可能な限りの多くの有用な情報を集め、状況に合わせた方法で分類し、すでに知っている情報を修正し、目的を共有する他の人々と共に情報を循環させることが新たな学習になっていくのです。目的を共有する他の人々と共に情報を循環させること、そして学習履歴の可視化で、極端な言い方をすれば「代理に学習してもらう」ということも現実に起こってくるかもしれません。