【開催報告】「業態を超えた連携と情報の利活用で新産業創出を探る」

2012年11月 7日 Posted in 通信プラットフォームWG

新世代BB研究会 通信プラットフォームWG 第14回講演会
「業態を超えた連携と情報の利活用で新産業創出を探る」開催報告

IMG_4987.jpgIMG_4982.jpg2012年10月23日、新世代ブロードバンド研究会・第14回行事として「業態を超えた連携と情報の利活用で新産業創出を探る」テーマに講演会を開催いたしました。

日本のICT産業は技術力や製品品質で優位性を持っているにもかかわらず、国際競争力は低下の一途をたどっています。わが国がこれまで得意としてきた"ものづくり"は決して否定されているわけではありませんが、今後は製品とサービスを一体化させ相乗効果をもたらす仕組みを作っていくことが求められます。今回は既存産業や既存のビジネスモデルを超えた新しい協業関係やビジネス手法を模索していくためのヒントとして、5つのミッシングリンクをつなぐことを提言される総務省大臣官房審議官・谷脇康彦氏より、目指すべきデジタルエコシステムのあり方について論じて頂きました。そして民の立場から、情報の利活用事例としてM2Mとビックデータ利用による新産業創出の事例などを、株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO・藤原洋氏にご解説いただきました。

■講演
「ミッシングリンク~デジタル大国ニッポン再生~」
総務省大臣官房審議官 情報流通行政局担当 谷脇 康彦 氏

IMG_4986.jpgIMG_4996.jpgわが国は、インフラ整備においては世界で先行しています。国を挙げてブロードバンドが使えないエリアを解消しようという取り組みをしてきており、超高速ブロードバンド基盤の整備率は約95%(2011年9月末時点)、FTTHの普及率も約58%と、インフラ整備では世界トップといえます。日本の産業の中で情報通信産業(ICT産業)は名目国内生産額の約10%を占め、GDP比でも約3.7%と自動車製造業に匹敵する産業に成長しました。同時に、ICT産業は景気を引き上げる産業としても貢献しています。その一方で、ICTの利活用という点ではまだ十分でなく、とくに電子行政の整備や教育、医療分野などの使いこなしが足を引っ張っています。
 ICTの利活用をさらに推進し、また5つ視点からのミッシングリンク(失われた環)を解消して行くことで、わが国は更なる成長を図ることができると考えます。
 まず1つ目は、「機器とサービス」をつなげて行くこと。世の中では情報のアンバンドル化が進展しています。かつてはソフトとハードが一対で提供されてきました。たとえば新聞と記事、放送と番組、CDと楽曲という形でした。しかし情報化の進展でこれらの広大な情報を整理するプラットフォーマーが登場し、それらを利用者中心に様々なハードウェアで利用するような環境へ移行しつつあります。いわば、クラウドに情報を寄せて行き、こうしたコンピュータ資源を中心とした新たな垂直統合モデルが誕生しました(GoogleやAppleに代表されるような)。かつてハードとソフトの一体化の必要性は、オラクルのCEO・Larry Ellisonは、"昔はマイクロソフトとインテルといったソフトとハードを別に調達してシステムを構築したが、インターネット時代を迎え、一体化したほうが効率がよく、使い勝手もよくなった。アップルがいい例だ。""ソニーなど日本企業は家電で成功したが、デジタル転換に十分対応できなかった。ハードは強いが、ソフト開発力に欠けたからだ。"(日本経済新聞2012年4月8日朝刊)などと述べています。
 モノ作り大国・日本がどうあるべきでしょうか。今後はメーカー、通信事業者に加え、開発者コミュニティやユーザーコミュニティが一体となって、顧客満足度を高めた製品・サービス作りをして行くことが重要なのでしょう。
 2つ目は、「供給者と利用者」をつなげて行くこと。わが国の情報通信分野における国際競争力 は18位と低迷していますが、一方で評価項目のうちイノベーション力は1位(2012年)、買い手の洗練度も1位(2011年)と、世界から高く評価されているポイントもあります。これらは言ってみれば「消費者の目が肥えていて、それに応える商品やサービスを生み出す力がある」ととらえることができます。たとえばiPhoneはアメリカのAppleというメーカーが中国で生産した端末ですが、その中身の部材の4割以上は日本製と言われています。サービスの供給者と利用者のコラボレーションが一層重視されていくことで、日本のモノづくりも変わって行くでしょう。iPhoneが分かりやすい事例ですが、洗練された使いやすいユーザーインターフェイスは価値になります。こうしたプレゼンスは日本の消費者によって高められるはずです。
 3つ目は「情報通信産業と他産業」をつなげて行くこと。わが国の情報化政策の中で電子行政は常に課題になっていますが、10年来まったく進んでいるとはいえません。韓国はクラウドといえるかは微妙ですが、電子行政の共同利用ができており(70種類の共同利用を目標)、コスト削減の実績を上げてきています。
 4つ目は「国内市場と海外市場」をつなげて行くこと。わが国の人口推計では2100年には4400万人になると言われています(明治時代後期の人口に)。人口が1/3になるということは国力も下がるということ。これを補うにはわが国の産業がグローバルで勝負して行く必要が迫られているということです。さらに高齢者も働いてもらう環境を構築して行くことが重要です。高齢者に対応したソリューションを世界に先駆けて展開し、その製品やサービス、ノウハウを世界に展開して行くということも考えられるでしょう。
 最後は「官と民」をつなげて行くこと。今後はクラウドサービスの国際的コンセンサス作りが重要になります。たとえばシンガポールで保管されていたある個人情報が海外で流出したというケース。その場合法的にどこの国でさばくべきか? じつはこうした課題の答えが無い状況にあります。途上国におけるインターネット利用者は44%(2006年)から62%へ(2011)急増しつつあります。そうした中でインターネットが社会を大きく変える力を持ち、「アラブの春」に代表されるような国政を変えるような展開にもつながっています。インターネットは21世紀の公共空間といえます。そのようななかインターネットにおける情報を検閲するような規制も出てきました。米国では、インターネットに対する検閲や規制強化を批判(2010)し、検閲されないPCセットを途上国に送り込む取り組みなども行いました。日本としてはアメリカ側の立場につきながらも、ソフトランディングできないかと考えています。情報の利活用を推進していくには「パーソナルデータ」の有効な活用が重要になりますが、一方で「プライバシーの保護」という課題があり、表裏一体です。このため、総務省では「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」を開催していきます。ご期待ください。


■講演
「M2M・情報連携とビッグデータが拓く新ビジネス」
株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO 藤原 洋 氏

IMG_5003.jpgIMG_5006.jpgミッシングリンク解消手段の一つとして、ICT産業と他の産業が協働するために業態の壁を超えて情報(データ)の連携を図るべく、グローバルな時代認識とICT業界の歴史的発展経緯をふまえて、「民」という立場から業態を超えた多様なデータを融合させ、蓄積させたデータから経済的な価値を引き出すビッグデータよる新産業創出について述べさせて頂きます。
 谷脇様の話の中でもあったように日本はインフラではリード、デジタル放送でもリード、モバイルインフラでもリード、一方で負けているのは半導体産業と家電産業で韓国に敗退、携帯電話端末でアップル、サムスンに敗退しているような状況です。ICTトレンドを見据えた上で強みを活かす戦略が求められて行きます。
 ICTは2020年に向けて実際に動き始めています。その重要なトレンドは「新興国における急速な普及」「モバイルアクセスの急伸」「ソーシャルメディアの拡大」「スマートフォンフラの発展」の4つ。新興国の急速なICTの普及は、IPアドレスの枯渇が問題になりましたが、逆にこれがIPv6の普及を急速に牽引しています。IPv6ならば世界の人口を超えてほぼ無限にIPアドレスを利用できるようになります。そしてモバイル・アクセスの急伸が見られます。3GからWiMAX、LTEへ移行、スマートフォンの躍進、PCからタブレットへと、大きな変化が出てきました。ソーシャルメディアの拡大も見逃せません。そしてスマートインフラの発展も重要です。東日本大震災はエネルギー政策の歴史的転換を促そうとしています。エネルギービジネスのパラダイムシフト、つまりエネルギービジネスが関わってきます。
 2020年に向けた4つのトレンドの先に考えられること、「新興国における急速な普及」「モバイルアクセスの急伸」でM2Mが普及しM2Mの統括管理が求められるようになり、「ソーシャルメディアの拡大」も合わせてアクセスは急増し、そこには大量非構造化データが散見し、「スマートフォンフラの発展」ではエネルギーの地産地消が求められるようになり、再生可能エネルギーの模索も活性化して行きます。それらの先には「膨大な非構造化データが産出」されることになり、それがビッグデータとなります。こうした大量のデータの収集・解析により、社会経済の問題解決や新事業の創出が実現します。
 ビッグデータの解析事例をあげれば、2010年10月インディアナ大学のヨハン・ボーレン准教授が1億人のアクティブ ユーザーを誇るツイッターを分析、将来の株価を86.7パーセントの精度で予想しました。これは2008年2月から12月までの期間、270万人のユーザーによる980万件のツイートを収集し中から感情を吐露しているものを抽出して分析。「平穏」の感情を示す尺度が3〜4日後のダウ・ジョーンズ工業株価平均の動きと近いことに着目し、機械学習アルゴリズムに組み込みました。この後、ソーシャルメディアの動きを株価予測に役立てるヘッジファンドも登場しています。
 従来のデータ分析と「ビッグデータ」の違いは、非構造化データを含む大容量のデータを、高速処理することです。
 IDCの予測では、2010年から15年の間に世界全体のデジタルデータ総量が約1.2ゼタバイトから約7.9ゼタバイトへと6倍以上に増加。企業によって扱われるデータ量も飛躍的に増加しようとしています。さらにデータの中に非構造化データが占める割合は9割以上といわれています。つまりブログ画像など、従来型のデータベースには格納できないデータが大多数ということになります。こうしたデータを処理するための能力ですが、コンピューティングパワーは従来考えられなかったほどの高速処理が可能となり、いよいよデータ分析の時代からビッグデータの時代へシフトしたのです。
 さらにM2Mが注目を集めています。エネルギー問題に始まるスマートグリッド、スマートコミュニティ、 スマートシティは、あらゆる機器をネットワーク化し稼働状況の計測と制御を行う必然性が生まれました。無線通信技術の急速な発展は人間を対象とした通信から機器を対象とした新領域を求め始めました。スマートフォンの登場が無線通信網のIP化も加速させています。M2Mには通信モジュールが必要ですが、そのうちIPv6を割り当てるようにしていくことになるとしても、現状の通信料はもっと下げる必要あるでしょう。電波利用料として総務省に毎年700億円が納められている。その税額は1端末約200円とされていますが、M2Mで利用されるセンサーが1つあたり200円も課税されるのは高いと感じる。ビッグデータ推進のためにもM2Mにおける電波利用料の課税は特例が必要ではないでしょうか。低コストに情報を集める仕組みが、世界をリードするM2M+ビッグデータ市場を牽引することになると考えます。